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大塚国際美術館 ヨハネス・フェルメール [美術・娯楽]

ヨハネス・フェルメール。
17世紀生まれのオランダ出身の画家だ。
バロック絵画を代表する画家の1人であり、同時代のオランダ出身の画家としてはレンブラントがいる。
著名な画家だが、現存する作品数が少なく三十数点しかない。
20代のころは裕福で、パトロンや資産のある義母のおかげで、ラピスラズリなど高価な顔料を惜しげもなく使うことができた。
しかし、戦争の影響などによる絵画市場の縮小などもあり困窮していくようになる。彼が40代前半で亡くなったときには、多大な負債と未成年の子どもを含む多くの家族が残された。

大塚国際美術館にはフェルメールの作品が6点あり、ここではその6点すべてを取り上げる。
(大塚国際美術館ではフェルメールギャラリーと呼ばれる細い部屋に彼の作品が集約されている)

地理学者
『地理学者』。
原画はドイツのシュテーデル美術館が所蔵している。
2000年と2011年に来日しており、2011年のときは日本で鑑賞することができた。
『天文学者』に構図が良く似ており、モデルの風貌、東洋風の衣類などから、一対のものとして扱われてきた。
背景の棚に置かれている地球儀は、アムステルダムで制作されたもので、地球儀と天球儀は当時同時に売買されており、それも一対のものではないかという根拠になっている。

ワイングラスを持つ娘
『ワイングラスを持つ娘』。
原画はドイツのヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ美術館が所蔵している。
2008年に来日しているが、自分は鑑賞していない。
こちらも似たモチーフの別の絵画がある。『紳士とワインを飲む女』だ。室内の男女とワインという舞台が同じ絵画だが、雰囲気は異なる。
『紳士とワインを飲む女』は上流階級が落ち着いてワインを飲む様子であるのに対し、『ワイングラスを持つ娘』は女性の仕草にワインを飲むべきかためらっているようにも男の思惑を見透かして妖艶に微笑んでいるようにも見え、やや世俗的だ。

ヴァージナルの前に立つ女
『ヴァージナルの前に立つ女』。
原画はイギリスのナショナル・ギャラリーが所蔵している。
ヴァージナルとはチェンバロに似た鍵盤楽器のことで、ルネサンス音楽やバロック音楽でよく用いられた。(その後ピアノがとってかわる)
これも似たモチーフの絵がある。左右が逆で、姿勢も異なるが、『ヴァージナルの前に座る女』という絵画がある。
こうしてみるとフェルメールは一つのテーマを違う角度から違う表現をすることを好んでいたようにも思える。
この『ヴァージナルの前に立つ女』は来日していない。(『ヴァージナルの前に座る女』は2008年と2020年に来日している。)

青衣の女
『青衣の女』または『手紙を読む青衣の女』。
原画はオランダのアムステルダム国立美術館が所蔵している。
2011年に来日した際、鑑賞した。
フェルメールは手紙を描いた作品がいくつかあり、これもその一つ。他には『窓辺で手紙を読む女』や『手紙を書く女』、『手紙を書く婦人と召使』などがある。
手紙を題材にしたのはフェルメールだけでなく、その当時のオランダの風俗画ではよく取り上げられられた題材らしい。

牛乳を注ぐ女
『牛乳を注ぐ女』。
原画はオランダのアムステルダム国立美術館が所蔵している。
アムステルダム国立美術館はこの作品のことを「疑問の余地なく当美術館でもっとも魅力的な作品の一つ」としている。
2007年と2018年に来日した。
テーブルの上の牛乳とちぎったパンの存在から、ブレッドプディングを作っているところだという説がある。流れる牛乳の様子がリアルに描写されている。

小路
『小路』。
原画はオランダのアムステルダム国立美術館が所蔵している。
2008年に来日している。
フェルメールが住んでいた17世紀のデルフトの様子を描いた絵画。
日本ではフェルメールは人物を中心にした絵画が有名で、この作品はそれほど知られていないと思う。(少なくとも自分は他の作品よりも目にする機会がなかった)
この場所が実際にはどこだったのか長らくわからないままだったが、2015年に当時のデルフトの運河沿いのすべての家屋や通路のアーカイブを本格的に調査した結果、現在ではその場所が特定されている。

デルフト眺望
『デルフト眺望』。
原画はオランダのマウリッツハイス美術館が所蔵している。
来日したことのない作品。
フェルメールは、先に取り上げた『小路』とこの『デルフト眺望』が都市の様子を描いた作品で、風景画としてはこの2点のみだ。
個人的にはこの作品はかなり新鮮に感じた。
この作品が競売にかけられた際、現在の所蔵館であるマウリッツハウス美術館の当時の館長は当初関心を示さず、アムステルダム国立美術館の館長は所蔵を希望した。アムステルダム国立美術館は政府に働きかけ、政府が落札したものの、国王のウィレム1世はハーグへの移管を命じ、結果的にマウリッツハウス美術館の所蔵となっている。その際、マウリッツハウス美術館館長は「当コレクションにさほどふさわしいとは思えない」という言葉を残したが、その後人気となった。
アムステルダム国立美術館に置いてあげればよかったのに。

最後に取り上げるのは、おそらくフェルメールでもっとも有名な作品。
真珠の耳飾りの少女
『真珠の耳飾りの少女』。『青いターバンの少女』や『ターバンを巻いた少女』とも呼ばれる。
「オランダのモナ・リザ」とも称される。
原画はオランダのマウリッツハイス美術館が所蔵している。
1984年、2000年、2012年、2018年と何度も来日しており、自分は2012年のときに鑑賞した。
モデルは誰かわかっていない。一説には娘のマーリアではないかという意見があるが、確たる証拠がなく、謎のままだ。
その謎が創作意欲をかきたてるのか、いろいろな作家や映画監督が題材にとりあげている。
1881年まで所有者が転々とし、オークションにおいて2ギルダー30セント(およそ1万円)でこの絵を購入したのがデ・トンブ。デ・トンブには相続人がいなかったため、彼の死去後、この絵は他の絵画と一緒にマウリッツハイス美術館に寄贈され、以後も所蔵されている。落札時点で非常に状態が悪かったため、1882年に補修が行なわれ、1960年にも補修が行われている。1994年から96年の2年をかけて徹底的かつ入念に修復作業され、やっとフェルメールによって描かれた当時の状況に非常に近いものとなった。
現在競売にかけられるなら、その価格は150億円にもなるのではないかと言われている。
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